4月の下旬のお話です。
ある平日の夜
相談所のカウンセラーさんから連絡が入りました。
「10年婚活男子さん、今日夜、時間あります?都合がいいときに電話させてください」
「いま、大丈夫です」
「はい。10年婚活男子です。」
「Z合さんとは、その後、どうですか。両親への挨拶はもう終わった?」
「はい、忙しくて連絡できませんでしたが、終わりました。」
「じゃあ、今度時間があるときに、来れる?」
「それって、成婚退会するってことですか?」
「そうですよ。あれ?両親への挨拶は終わったんですよね。」
「は、はい。でも、退会って、Z合さんは、どうしてるんだろう。」
「Z合さんは、もう退会しちゃいましたよ。」
「う、うん、わかりました。じゃあ、今週末に伺います。」
とうとう、その日が来ました。
願いに願った、憧れの成婚退会です。
でも・・・、
あれだけ、ず~と切望していたはずなのに、心が晴れません。
本当に、Z合さんでいいのか?
この問いに未だ答えが出せてないのです。
結局、Z合さんに初めて会ったときに感じた
「ん?」
という部分。
その部分がなくなったわけでも、受け入れることができるようになったわけでもありませんでした。
「いいな」と感じながらも、同時に、けっこう大事な部分で「ん?」と感じてしまう関係。
Z合さんも、「努力する」って言ってくれたし、
自分も「受け入れる」「他の良い所をみる」としてきたつもりなんですが、交際を一歩進めるタイミングになる度に、毎回、悩んでしまうんです。
本当に器の小さな男です。
週末までに心を決める、と覚悟を決めたものの、気持ちが整理できないまま、あっという間に、週末になりました。
マンションの一室にある相談所に行くと、
カウンセラーさんが出てきました。
「今日は、成婚料持ってきた?」
「はい、途中でおろしてきました。」
「じゃあ、受け取りのサイン書くから。」
「わかりました。」
・・・・・・
「でも実は、まだ悩んでいて・・・。」
「もう、両親への挨拶は済ませたんでしょ?」
「はい。」
「だったら、もう、あれこれ悩むのはやめて、彼女の良い所だけ見てあげな。」
「10年婚活男子さんと、Z合さん、いい組み合わせだと思うけどな。」
「彼女、おっとりしてるし。」
「なんだろう、これ。一回は心を決めたつもりだったのに。」
「男性にもマリッジブルーとかあるんですか?」
「ありますよ。環境が変わるときにはみんな不安感を感じるものです。」
「大丈夫。失敗しても、10年婚活男子さんくらいの年齢なら、もう、みんな一度は結婚してるから。」
「本当は、ここに来る前に、心を決めてくるつもりだったんですけど。」
「あはは、確かに、浮かない顔してるね。(笑)」
「どこに住むか決めた?」
「はい、この辺の近くです。」
「そう、それじゃ、今度、Z合さん連れてきてね。」
「わかりました。」
「じゃあ、ここにサインして。」
「はい、これでいいですか。」
これが、10年の婚活が本当に終わった日となりました。